研究系及び研究施設の現状 191
界面分子科学研究部門(流動研究部門)
小宮山 政 晴(教授)
*)
A -1)専門領域:触媒表面科学、光表面化学
A -2)研究課題:
a) 走査型トンネル顕微鏡( S T M )による光触媒励起状態の空間分解分光 b)S T M による脱硫触媒活性点構造の解明
c) アパチャレス近接場光学顕微鏡( S NOM )の試作 d)燃料電池用燃料処理触媒の評価
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) S T M を用いて,紫外・可視光による光触媒励起状態の空間分布測定を試みた。バンドギャップ 3.2 eV の T iO2(110)単 結晶表面は,紫外光励起により表面全体が励起されたが,ステップならびに(1×2)領域で励起の度合いが大きかった。 この表面を可視光励起すると,表面のほとんどは反応しなかったが,ステップならびに(1×2)領域の応答が観察され た。この可視光応答性を,チタニア表面における酸素欠陥ならびにその電子状態と関連付けて議論した。
b)石油系燃料による環境汚染の軽減のために,これら燃料中のイオウ含有量に対する規制は年々厳しくなっており, この規制を満たすための脱硫技術は益々その重要性を増してきている。ここでは,通常の脱硫過程の触媒として用 いられているCo–Mo触媒に注目し,S T M を用いてその活性点構造を解明しようと試みた。脱硫触媒は,硫化による 活性化を経て使用に供されるため,S T M装置に硫化処理専用の前処理室を作成した。MoS2表面に,脱硫触媒の水素 化分解活性点に帰属できる新規な構造を見出した。
c) アパチャレス S NOM は,通常の S NOM の分解能が光ファイバプローブの開口径で制限されるのに対して分解能の 制限がなく,原子分解能を実現する可能性の高い手法である。現在装置,制御回路,検出系などの設計・試作を行って いる。
d)将来のエネルギー問題解決の切り札と目されている燃料電池は,水素を大気中の酸素と反応させてその自由エネル ギー変化を電気エネルギーとして取り出すものであるが,その水素を発生させる燃料処理装置は,天然ガス,灯油な どを脱硫し水蒸気改質して水素に転換するものである。これら燃料処理装置のための触媒系の開発と評価研究とを 開始した。
B -1) 学術論文
M. KOMIYAMA, D. YIN and Y. -J. LI, “Electronic Structure Change on TiO2 Surface due to UV Light Irradiation,” Stud. Surf. Sci. Catal. 145, 203 (2003).
B -3) 総説、著書
小宮山政晴 , 「S T M/A F Mによる触媒表面解析」, ペトロテック 26, 478 (2003).
192 研究系及び研究施設の現状 B -7) 学会および社会的活動
学会の組織委員
“Atom-Level Informatics, Simulations and Experiments in Materials Designing,” 7th World Multi-Conference on Systemics, Cybernetics and Informatics, Invited Session Organizer (2003).
“The 12th International Conference on Solid Films and Surfaces,” Program Committee (2003-2004).
学会誌編集委員
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology, Editorial Board (2003- ). Chemistry Letters, Associate Editor (2003- ).
B -8) 他大学での講義、客員
山梨大学工学部 , 「物理化学大要」「基礎物理化学」「資源物理化学」, -2003年 3 月 . 信州大学工学部 , 「環境機能特別講義」, 2003年 7月 16日 -17日 .
新潟大学工学部 , 「機器分析化学」, 2003年 9月 24日 -26日 . 東京工業大学工学部 , 「機器分析特別講義」, 2003年 11 月 26 日 . 湖南師範大学 , 客員教授 , 2001年 -2004年 .
C ) 研究活動の課題と展望
エネルギー問題は,人類が今世紀中に直面する最も大きな問題の一つである。有限なエネルギー資源を有効にかつ環境 負荷の少ない形で使い続ける一方で,来るべき循環型社会に適合した再生可能エネルギー資源の開発は急務である。固 体表面と光との相互作用は,光触媒を用いた水の分解による水素製造に関連して興味深い研究課題である。また再生可能 資源であるバイオマスも,燃料電池用の水素供給源として有望であり,これから水素を抽出するための燃料処理装置の開 発が待たれる。今後はこれらの方向に研究を展開してゆく。
*)2003 年 4月 1日山梨大学大学院医学工学総合研究部教授